抱きしめてくれる腕があればどうでもいいと思ってしまうぐらい、その腕は温かい。

「……好きなの」

はたから見れば恋人みたいな格好なのに、わたしと先生の話はいつも彼のことだ。

問いかけに困ったような顔をした先生はいつも笑っているくせにこんなときだけ笑ってくれない。痛がってる顔なんて今まで一度もみせてくれなかったのにとてもかなしそうな顔をして、まるで責めてるみたいな気持ちになった。

「こたえて」
「……」
「そんなことも、言ってあげないの」

わたしが何度言ったってかなわない言葉をいえるくせに。言葉をいわなくたって、どうしようもないくらいつかまえてるくせに、ふりかえってやることもしないのか。

「おれは…」

俯いた先生の閉じた睫が白く光って涙みたいに見えた。掠れた苦しそうな声だ。

「きっと」

聞いてられなかった。曖昧な言葉ひとつ彼に言ってあげもしないで抱きしめてあげもしないで、かといって私に嘘もつかない。きっと簡単にできるのに。

そんなところばかりどうしようもなく似ていて厭になる。

どうしようもなくて、ぎゅっと抱きつくと先生の手がわたしの頭を撫でた。まるで壊れ物みたいに私たちに触ってくるかさついて傷ついた手だ。サスケくんと同じ手だ。誰かを傷つけるんじゃないかといつも怯えたバカみたいに優しい手、簡単に勘違いしたくなる甘い手だ。

「…サクラに好かれる子は幸せだね」
「なによ、それ」
「抱きしめてくれるから」

言われたってちっともうれしくない。泣きたくなるだけだ。

でも私の好きな人は好きな人がいるのよ。
抱きしめたくたってさせてくれないし、抱きしめてもくれないの。

俺ね、きっと抱きしめてほしいほうなんだよ、と先生は笑った。

ばかね、先生、知らないの。サスケくんは抱きしめられるよりよっぽど抱きしめることばっかり上手なのよ。先生と同じで。











「甘い手」カカシサスケサクラ











でも先生はべらぼうに抱きしめ上手なんだと思います。 サスケくんも(サスケは無意識で)。 ただサスケは抱きしめて欲しいとは思わないタイプ。 猫の恋、とつながる?




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