俺には夢がある。野望がある。 両手いっぱい抱えきれない、でもまだまだ欲しがる。 「……こんなに修行してんのになんでできねーんだか、わかんねえんだよなー」 声の震えにイルカは思わずナルトを仰ぎ見たが、子供の頬は乾いているようだった。それからナルトが眼差しを投げている方を見た。火影の顔岩。ちがう、その下だ。イルカは強い日差しを遮るために目の上に手をかざし、かすか、細めた。 「……できるぞ」 「ホント?!」 マジかぁー、と目を細めて足の間から尋ねてくるのに、イルカは無言で鉢金を指差した。 「なるんだろ?」 きょとんと目を瞬いたナルトの膝に、イルカの鉢金にあたって反射した光がはりついて揺れた。じわじわと驚いているナルトの顔に、明るい色が混じりだすのをイルカは見ていた。 「なるんだろ」 「おう!」 後はお気に入りの大宣言だ。はったりじゃない、両手でも抱えきれない夢と野望と道のりだった。唱えるだけでいつでも夢見心地になれる。 拳を突き上げ、腹に力をいれ、思い切り叫べば、顔岩の踊り場にいる人影がふりむいた。薄桃色をした少女が片手をふるのにナルトは何度も飛び跳ねる。給水ポンプの錆びた梯子がそのたびにギィギィときしむのにイルカはすこし眉をしかめたが、ナルトはおかまいなしだ。少女の隣に立つ少年はポケットに手を突っ込んで佇んでいるだけで、毎度おなじみの科白を呟いてるだろうとたやすく想像はついた。 どうやら少女はなにか叫んでいるようだ。首をかしげたナルトに、イルカはしょうがないなと耳をすませた。声が大きい人間はあまり耳がよくないと言うが、ナルトもそうなのだろうか。遠耳に少女の声がかすかに引っかかる。 ”なにやってんのよ、バカナルト、落ちてもっとバカになったらどうすんのよ” 少女がラッパのようにしていた両手を口からはずし、高台の風にあおられて乱れてしまった髪を直している。そういえば、アカデミーの最前列で手鏡を覗きこみ、一生懸命くせをとろうとしていたのを思い出した。イルカに気づいたらしく、慌てて頭を下げる。隣の少年も軽く頭を下げた。 「なんつってたのかな、サクラちゃん」 「落ちたら危ないから、降りろだって」 「それさっきのイルカ先生の科白じゃんか」 「サクラも同じことを思ったんだろ。降りて来い」 「はーい」 ちぇー、と唇を尖らすのに、やぎとなにかは高いところが好きだという言葉を思い出さずにはいられなかったが、イルカは口に出すほど人が悪くなかった。 「先生、オレ、七班でよかった」 ナルトの視線は遠くに据えられたまま、イルカもまた同じ二人から視線をはずさない。 「そうか」 「うん、すげー好き」 「そうか」 「ラーメン」 「……またか」 「オレ、イルカ先生の生徒でよかったってばよ」 「……味噌でいいな」 鼻の傷を撫で、ポケットに入っている財布をズボンの上から手のひらで押えている中忍に少年はにししと笑った。給水ポンプの蓋を蹴って、飛ぶ。 「うん、すげー好き!」 サスケはむかつくし、カカシ先生は野菜を持ってくる。 だけどサクラちゃんが最高きれいにわらってるならぜんぜん問題ない。 いつか俺はミサイル、俺はイナヅマ、嵐の夜を駈けぬけて雲もはるかに星空とおく。 飛行機雲を書く男だ。 ついでにいつか伝説になる男だ。
「ミサイルマン」/イルカとナルト
|