「多分、できるよ。お前そういうのに嫌悪がないほうだから」 手首をひっぱればくずれかけの果物みたいな脆い手ごたえで落ちてくる。瞬きもしない黒い瞳をみつめたまま、ゆっくりと唇を重ねていけばたやすく開いて息が溶ける。 「……なんでアンタおれなんだ」 しゃがみこんだまま、搾り出すような声にカカシはゆっくりと笑い、するどくそげかけた頬をかくす髪を両手でかきあげて耳のうしろにかける。かたちのいい耳を覆うようにして額をつけてもサスケは目を閉じて俯き曖昧な拒絶をしめすだけだった。サスケはカカシが自分を傷つけないものだと覚えてしまっている。 「そんなこと言うなら、ちゃんとくっつきなよ。ナルトに言えって」 「言ったよ」 短い答えに虚をつかれて黙りこむと、サスケはすこし笑ったようだった。肩がすこしだけ揺れる。 (お前見てると、やんなるんだよ) (隙だらけでさ) (簡単につけこめてしまうから) 眩しいものに憧れて手をのばしたいのに伸ばせない、伸ばすことも怖い、そういう気持ちも自分はよく分かる。きっとサクラも知らない、ナルトも知らない。だから似ているなんて自分とこの少年は言われるのだ。 (お前によく似た奴を知ってるよ) 情が強くて、頑固で、ただサスケよりずっと泣き虫だった。でもカカシより色々なところがずっと強かった。彼の言葉は今でもカカシを深い淵からひっぱりあげる。 頭をひきよせて髪の毛にすこし唇をつけると、日向の匂いと草と土がまじったような香ばしい匂いがする。 「俺はおまえが好きだよ」 「オレはちがう。……やめろよ、したくない」 唇を硬い手の平が覆って、拒む。でもナルトを好きでいるのは疲れてる、そういうところも自分は知ってる。指がすこし震えている。バカだなあとカカシは思う。 「でも嫌いじゃないだろ」 ゆっくり手をはがしながらキスをする。今度こそ手の中にゆっくりと落ちるのがわかった。あんまり考えなくていいんだよ、こういうことは。唇がほんのすこし塩辛い。バカだなあ。思わず呟けばうるせえよと強がりが返ってくる。蝶みたいに震える睫をゆっくり唇ではさんだ。 ああ泣きそうだ。 カカシ→サスケ→ナルト(→サクラ) という片思いスパイラルにどら萌えます。 |