「気は長くないんだよね。我慢するのもきらいだし、むらっ気だから飽きやすいし」 うん、それでね、と男はかるく平坦な声を続け、それから錆びた色をした目をサスケに当てた。据えられたままでいた眼差しにすこし驚いたのか、片眉を跳ね上げさせ、そして目を眇めた。 「だけどオレって好きなものはけっこう物持ちがいいほうでね、拾った犬も全部飼ってる」 「?」 「ん、だめか。じゃあいいや」 くるりときびすを返しそうになる男に慌てたのはサスケだ。 「ちょっと待て」 「あー、うん、気にしないでいいから」 「どういう意味だ」 「だからね、オレは物持ちがいいんだよ。犬も八匹」 「それで、なんだ」 先をうながしながら声が上ずりそうになるのをどうにか堪える。じわ、と耳たぶの辺りに熱があつまりだすのがわかった。すこし顔がふくれるような、毛穴がぶわりと広がるような感じだ。男は機嫌のよい犬のように笑う。 「物持ちがいいんだよ」 「……さっきからそれしか」 「面倒見もいいんだよ」 「……それも」 「うん。何でそこで黙るかね」 わかってるんだろ、とちっとも困っていやしないくせに眉尻を下げる、こんな男にたやすく騙されて堪るかと思うから、是が非でも言わせてやろうと思う。 「で?」 「……お付き合いしてみません?」 |