ああ失敗したぞ。

真夏の日差しが町並みをあぶり、とけだしたアスファルトにゆらぐ逃げ水がいくつもつらなって渋滞する電車の列をゆがませた。こもった熱気とすすまぬ列に辟易した乗客から口々に不平がとびだしたところで、ようやく首に巻いた手拭いで汗をふきつつ車掌がもどってくる。

「こっから先はもう、ずっと続いてますもんで」

ええ、乗り換えのお客様はこちらで切符をきってつかァさい、と言った声に人なみはぞわりと動いて、斜めがけかばんから切符とはさみを取り出す車掌の姿はあっというまに飲まれた。

もし、と肩を叩かれて男は目をあける。朦朧と汗でにごる視界に、襟衣がまぶしい婦人が風呂敷をかかえ、こごむようにして覗き込んでくる。

「もし、具合でも?」
「暑気あたりですかね」
「降りなさるならいまのうちですよ」

日にさらされるうちに漂白されたか、くすんだ髪をかきあげ、男はあああ、辛い、と一言もらし、座席から立ち上がった。

(ああ、失敗したぞ)

よろめく足取りで男はどうやって部屋まで帰りついたろう。そのころには脇腹の布地はずっぷりと重くなっていた。取り出したさらしをきつく太股に捲き、間に空になってもう棍棒がわりにしかならない銃をねじりこませて、さらしを柄にからめた。ぎ、ぎ、とひねって固定する。

(ひとまずホチキスでいいか)

ざくりと割れた場所を机の上に放ってあったホチキスでばちばちと止めて行った。硝煙の匂いもいまはむせかえる血の鉄にもにた生臭いにおいにおおいかくされ、鼻は役に立たない。

「……帰ったのか?」

衝立がきしりと鳴るのにぶざまにうろたえた。
気配に気がつきもしなかったなんて。

ああ、めんどくさい。なんでもないって顔してよ。いつももっと可愛くない顔してるじゃない。大したことないから。顰め面は好きじゃないけれどそんな顔見たかったわけじゃないんだ。そんな顔かんたんに見せたらだめだよ。せっかく知らんふりしてたのに。

「……カカシ」

そんな声聞くとなんだかまるできみが俺のこと好きみたいじゃない。
ああ、くそ。骨はあるのに、筋肉も生きているのに。
ちゃんと歩け、バカ、俺の足。
白い羽毛も飛ばないような、ばらの花さえ散らないような、とっときのキスもできやしないじゃないか。













えーと、訳わかんないかと思うんで。
パラレルです。
ちょっと危ない運び屋さんのカカシと、
わけありのサスケ君。
(つってもなんも考えてないんで)




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