Love is Battlefield 思わず鼻から息がぬけて、無駄にエロい声が出る。指の股を伝ったぬるみは汗と混じっても体温と同じ温度のまま、手首から肘までを行ったり来たりを散々くりかえしてシーツを汚す。捲り上げたシャツが落ちそうになるのをもちあげて、捩ろうと跳ねる腰骨を掌でおさえた。 「……ぅ」 大きく広げられた足の間に自分の下腹がわりこんでいて、張りついた窓枠模様の影がゆっくりと開いたり閉じたりをくりかえしている。お互い示し合わせたように利き手を伸ばして互いの触角を重ねこねまわすよう握りこめば、果物のつぶれる音だ。閉じそうになる瞼を開いて、何度も唾を飲んで渇いた喉をどうにか湿らせる。 「……いてぇよ」 噛みしめたサスケの唇がほどけて忙しい息の合間、普段より幾分か低く、けれど掠れてか細く落とされる。でも痛いのと気持ちいいのが一緒の顔なんて反則だ。手をゆるめて体を引けば、ずるっとまた裏側のでっぱりを熱でこすられて歯を噛みしめて俯く。鼻梁の脇を伝った汗が唇で砕けてサスケの頬に落ちていく。覗きこむとごつごつしたナルトとサスケの手の中、ぬるぬる妙に血色がいいのが二つ、重なって口をひらいてい動いていて自分じゃない別の生きものみたいだ。 (おかしいなんてわかってる) まるで下半身だけ別物みたいに規則的に動いている。何度も太股の後ろがひきつって、中途半端に下ろしただけの短パンが汗ではりつくのもわかる。自分のより色の濃い茂みを指の腹でかき混ぜて掌で潰すようにすると、サスケの喉がゆっくりのけぞった。自分のをきつく捕まれて、声がでる。 「いってぇってば」 不意打ちだからちょっと漏れた。下唇を突き出すようにしてサスケの顔をしたから覗きこむと、似たような状況らしくきつく眼を閉じて、無理やり深呼吸をしている。まっすぐ長い睫の生えた目尻が血の色を透かしていて、たかが数ミリで紙一重の不細工だろうと造作が整ってるのはいいと思う。下になっているサスケの腹、腹筋の窪みから筋にそって汗と体液が下肢や腰へと流れた痕がいくつもあって、またちょっと漏れた。汗が二の腕から肘におちていく。すべりすぎるのがいやで、一回手をシーツでぬぐうともう一度握りこんだ。サスケが息をのむ。 「……いれてえよ」 「……ざけんな」 女の果物じみた水気と柔らかさに食まれるのとは違う、あのみしみし軋むように肉を押し開いてく時、皮膚周りの空気が発熱して窒息しそうになる息苦しさと紙一重、目の前に真っ赤な花が眩めく瞬間。思い出しながらずるりと引いてお互いをまたこすらせていくと煽られるのか、サスケの息がだんだん忙しなくなる。こめかみから流れた汗が右眼にはいって沁みるけどおかまいなしだ。 「いいじゃんかよ。アレ、すげえんだ」 「……ぅっ」 露骨に言いながらゆっくりと揺すりきつく握りこむ。そう、こんな感じ。下半身だけ別物だなんて嘘だ。自分の中にはこういう蛇が息づいて腹のほうで舌なめずりをしながらとぐろを巻いていて、ちゃんと神経に食いこんでいる。体重をかけないようつっぱっている二の腕は限界でぶるぶる震えるけれど、もうすぐだから頭のてっぺんを枕に押しつけて堪える。サスケのが掌でびくびく跳ねてる。耳元でちいさく噛みしめるのとかが聞こえると、本当に中に入ってるみたいでたまらない。もっとひっつきたくて、すこし浮いたサスケの腰のしたに手を回すと、首に腕がまきついて窒息しそうだ。こんな感じも似てて錯覚する。膝が震えて爪先が丸まった。 (なんでこんなんで興奮すんだろう) すこし重くてつめたい二の腕も、指先でとけそうな肌や肉もない、熱くてきつくはりつめた自分と同じ体だし、どっちかっていうとサスケの体は女より反応が鈍い。でも時間をかければ反応して、ほんのすこしだけやわらかくなるのを知った。 おたがい噛みつくように唇をかさねて、舌先が触ったかと思うとあっという間だった。限界だった二の腕が螺子をひきぬかれたように崩れ、サスケを潰す。まるで思い出したように耳に蝉の地鳴りみたいな声が響いて、体中を汗がぬらしまくってるのがわかった。夜の寝返りでシーツの冷たさに今更気がつくように、喉の渇きや体の痛みが下腹にうずまく疲れと甘怠るさの後ろに侵食してくる。 色気なんて皆無のうめき声に横に体を滑らせたけど、唇はひっつけたままだ。あんまり触ってるときはキスをしない。キスばっかりしてると、手の動きがおざなりになってしまうから、終わってからちょっとするのがいい。息苦しいけれど、肉みたいなのが口の中を動き回ると、口の中はやっぱり自分の体の中なのだと変なことを思う。自分じゃないものがいる、嫌悪と紙一重の感覚。 汗でひかる肩はちょっとだけ冷えていて、額を押し当てると肌が張り付いた。サスケの匂いがする。いった後、精液の匂いじゃない、汗になんかまた違う匂いが重なったような不思議な匂いがいつもする。 「明日、休みだろ。いいじゃんよ」 自分がそういう匂いをさせてるってことをこいつは一生気がつかないんだろう。 オレの頭がおかしいだけだろうか。やっぱり九尾のせいで変なとこに鼻がきくんだろうか。 「痛くしねえし。最近、上手くなってきたろ、オレ」 「……」 黒い眼だけが横向きに見つめてくる。まだどこかさっきので潤んでいるのをみたら、女なんか抱きつきたくなってしょうがなくなるんだろう。オレは舐めたくなるのでそのまま体をおこして顔を傾ける。睫を唇で挟んでひっぱるようにすると、くすぐったいのかサスケがちょっとだけ笑う。 「いてえなら途中でやめっから」 不貞腐れたようにいうと、なんだかしょうもないものをみるようなしかめ面のあと、色気もなんもなく片足がオレの足に乗っかる。こめかみをそれぞれ両手の親指で押さえられて、髪の毛をかき回されながらおもいっきり唇に噛みつかれた。 早くしろってあたり、やっぱりサスケからこの匂いがするときは『当たり』なのだ。 夏は唇がひらきやすく体温が肌の間の空気になじみすぎる。まるでお互い嘘を抱えた友達同士のように、言葉がわりにせわしない呼吸を交わしてオレ達はこの一日を暮らすだろう。このドアを開けたらきっとカカシ先生やサクラちゃんの前で箸にも棒にもひっかからないくだらなさでケンカをするに違いない。意味のある言葉なんてきっとどこにもないにちがいない。 オレ達は盛大に時間をお互いで無駄遣いをしているのだ。 果たしてこれはなんだろう? オレはバカだからよくわからない。 |
「Love is Battlefield」/ナルトサスケ |
|