LOVELIFE6
















小さくひきつった声をもらしたサスケの爪がカカシの腕に食いこんだ。貝殻みたいな耳朶を口にいれてすこし吸い上げると、いっそうひどく爪を立てられる。

「……ぅ、う」

じわっと指から手の平につたったぬかるみを押しつけるようにすると、呑みこんだ場所がひきつる。根元からやわく揉みこむようにうごかすと、うすい筋肉におおわれた下腹が痙攣した。肩口に後ろ頭をおしつけてサスケが仰のいて息をかみ殺す。いやならカカシの手をおさえ付ければいい。だめなら這いずって逃げればいい。

(だけどしないよね)

サスケの両手は膝に抱き上げて曖昧にいじるカカシの腕に爪をたてているのと、膝の上で拳をつくっているだけだ。耳朶に軽く歯を立てるとしゃくりあげるように息をのんでまたちいさく溢した。

「ぁ、あッ」

指の腹でくじるようにすると、きつく目をとじて首をふる。きつくなったのにカカシも息を詰め、引きおろした襟ぐりに鼻先を押しつけた。汗じみた首筋にかるく噛みつく。いつもだとやめろだのなんだの罵声が飛ぶのに、今日はそんな余裕もないらしい。舌でざらりと舐めるとますますきつくなる。

「……きつい」
「な、ら……抜けッ」

子供じみた不平に返ってきた小さな、それでもしっかりとした怒りの声にカカシはちょっと笑って首筋に音をたててキスをした。ぶるっとサスケの体が震えて、手の中がますますぬるぬるする。

「やだよ、久しぶりなのに」
「ん、んッ」
「ね、息すって」

ささやけば言うとおりに息を吸って、吐く。何のかんの言って根っこのところが素直なのだサスケは。ぬるっと後ろの入っているところを指の腹でなぞると、息をつめてきゅうっと窄まる。

「ぁ、う」
「吸う時に力入れて、吐くときに抜いて。そうやって、……そう」

爪先をびくびくちぢこめながら言うとおりにする。物覚えがいい。一度教えれば忘れないですぐできるようになる。気持ちのいいことなら尚更。呼吸にあわせて狭くて熱いところが噛みついてきて、すごくいい。

ほんとは待ちもしないで身勝手にほぐすようかき回して思い切りぐちゃぐちゃにしたい。泣かせたりもしたかったりする。泣かせるのはたぶん楽だ。どこがどれだけ痛いかなんて、上忍になるまでどれだけ学んだと思う。知ってたら多分、膝の上になんて乗っかってくれないだろう。

(ああ、でもわからないな。情の強い子だし)

しなりきってひっきりなしに雫をおとすのを掌で撫でると、小さく声をあげてますますきつくなった。かさついた唇を噛みしめて一生懸命声を殺している。それでもサスケの手はやっぱりカカシの腕に添えられてるだけで、抵抗はしない。だから嫌がってない。自惚れじゃない。

「いいでしょ。そうしてて。オレも気持ちいい」

ぶんぶんと首を振っても笑ってとりあわない。やめるのはいつだってできるのだと最初に言ってある。主導権を握るのはカカシじゃない、サスケだ。サスケが嫌がればカカシはいつだってやめる準備がある。だからサスケは嫌がることができない。ずるいのは十分自覚している。

(だけどお前がしたいっていってくれるから)

気持ちいいといって欲しい。やりたいといって欲しい。自分が好きだといって欲しい。夜中に一人思い出していじるのでもいい、頭の中でならどんな格好でもしてやるしさせてあげる。かわりに同じだけ自分にくれればいい。

入れてはいてもちっとも動いてないのに、カカシの掌はもうどろついている。根元にはまだやわらかい毛が濡れてまつわりついて、とてもいやらしい。汗ばんだ膝が勝手に閉じたり開いたりするのはサスケが自分でそうやったほうが気持ちいいともうわかってしまったからだ。もぞもぞ身動きして、でも自分でおもいきり動かすこともできない。産毛の光る肩口から首筋まで唇をゆっくり滑らせると、ますます腕に爪が立てられた。

「あ、あ、も、もう……ッ」
「なあに?」
「う、ごけよ…ッ」
「だって久しぶりでしょ。待ってるんだよ」
「うそ、つけ……ッ」


一言で詰られてぎっと爪を立てられ痛いよ、とカカシは笑う。待ってるんだよ。ずっと。

「ん、ん―――ぅ」

ぐるんと親指の腹で括れをなぞるようにすると、面白いほどびくついた。零れたのをすくいあげて、こすりつけると濡れた音が立った。後ろがますますきつくなってカカシの息もあがる。身じろぐ体をだきよせて、熱くてせまい場所が動くのを味わう。下腹がひきつるくらい気持ちがいい。

突っ張った子供の足が何度か空中をもがいた。

「……え?」

指の間からどろどろっとおちた重さにカカシはつぶっていた目をあける。は、は、と小刻みに息をするサスケの体はすっかり力がぬけていて、右手は白いのでぬるついている。驚いて膝の裏にまわしていた腕を解いてシーツでぬぐうと、ずるりとサスケの体が前のめりに崩れた。

(うわ……)
「サスケ?」
「……なん、だ」

億劫そうな声が返るのに失神させたわけじゃないのかとほっとした。へばりついた黒い髪をかきわけると、いつもどおり切れ長の目じりからすこし怠るそうに潤んだ眼差しがよこされる。ぐりっと押しつけるようにすると、ずいぶん悩ましげな顔をして息をつめる。かき寄せたシーツに鼻をうめてくぐもった声をもらした。

「四つんばい、なれる?」
「……」
「動きたいから」


無理?ときくまでもなく恨めしげな顔をするサスケはもうぐでぐでだ。

「アンタが……」

とっととしねえから、と子供じみた声で詰ってくるのがくすぐったい。ごめんねと口先だけで謝ると、しょうもないものを見る顔をされる。

「ひさしぶりだし、傷つかないように、ってお前のためを思ってなんだけどね」

夏よりいくぶんか鋭くなった、それでもどこか子供の甘さをのこした頬に唇をよせると髪の毛を力の抜けた指でひっぱられて、カカシは痛いと抗議する。気持ちよかったくせに、とはかろうじて言わないでおいてやることにする。

(待ってるんだよ、ずっと)

逃げないのが肯定の証だなんて楽なことはさせてやらない。いやじゃないが好きだなんて甘えもゆるしてやらない。優しくなんてもしてやらない。カカシが寄っていけば犬みたいに鼻を鳴らして体中触ってと思うくせに。

ならそのかさついた唇をひらいて。

(欲しいっていって、もっとっていって、それで)

抱きしめて、唇がそれだけでしかないみたいにキスをして、キスをして、キスをして。

大丈夫、順番なんてわかっている。復讐、修行、仲間、自分はよくてその次。自分だってたぶん黒い髪と目をしてなかったらわからない。だけどきっかけはきっかけでしかないともわかっているから、この気持ちは嘘じゃない。さよならの準備ばかりよくなってしまうのは、ほんとうはさよならなんて言いたくないからだということもわかってしまっている。

だから言って欲しい。

(それで好きっていって)

そうしたら全部あげられそうな気がする。できそうな気がする。気がするだけだとも知っている。だけどそう思うことを、カカシはキスをするときだけほんのすこし自分に許す。

(みんな、みんなおまえにあげるよ)









「LOVELIFE6」/カカシサスケ






はいめんざい→ぐでぐでなのでバック
って萌えるなあって…。
ラブライフでした。








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