オレははげた。 朝起きて顔を洗っていたら掌に気持ち悪いくらい髪がたくさん付いてた。水の中にも髪の毛がなにかの幼虫みたいに泳いでいてたしかめるとこめかみの生え際あたりに小指くらいのふとさとながさで火傷痕の新しい肌色をした皮膚がみえた。額宛で隠れるからいいかとおもった。あまり問題ない。 顔面が筋肉痛にもなった。笑おうとしすぎたせいだった。気にすんなよと言われていつまでも沈んだ顔をしてしょんぼりしてたくなかった。無理すんなよって先生はいうけどみじめな気持ちのときみじめな顔をするのは楽だけど長続きするとなんか笑ってもないても一緒だ。一緒なら回りのみんなが心配しないぶん、顔だけでも空元気でも笑える分いいんじゃないかとおもう。みじめな顔はしたくなかった。 それにオレはかなしみを誰かと分かちあおうとは思わなかった。 悲しいことやうれしいことは溢れかえるとき誰かが一緒だと気持ちが良すぎる。ひたることでなんとかたちあがろうとする。でもしゃがんでなんかいられなかったしいたくもなかった。みじめだからせめて顔面だけでも笑いたかったのだ。 それこそがひたってるってことなのかもしれないけれど。 思考はがんばりすぎると言葉遊びの罠におちこむ。だけどいま大事なのは俺をうちのめすのはあいつがいない一つだけそれが全部だった。 後悔はたくさんある。誰かをせめたくもなる。 でも後悔していないことは殺さなくてよかったということだ。おれもあいつも死ななくてよかった。倒れていた俺を殺さない、ばかな奴だからオレはあいつをおいかける。自分が思うよりよほど甘くてやさしい、兄貴と同じ人種になんてひっくりかえったってなれない、気付いてないのはあいつだけだ。 オレはそう考えて痛む頬を歪ませて笑う。 うそではなく。 |
「ほんとうの話」/ナルトサスケ |
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