「暴力反対!夫婦の間でもゴーカンはあるんだってばよ!」 「……」 ポピーはご機嫌ななめ じろりと見下ろしてきたサスケをにらみつける。 今日は俺がやるやらないので押し問答の真っ最中。 「『ええか〜、ええか〜、ええのんか〜?』」 「ぶ!」 サスケですよ?しかも真顔だし。不意打ちすぎて俺は思わず噴き出してしまう。 「おま、真顔すんなし!……うひゃ、わわ、わ」 おもしろいじゃないか、と思って笑った拍子に、指がぬるーっと大きくすべって、袋と穴の間のちょっと微妙なところをぐりぐりしてくる。変な声が出る。ええか〜ってまだやんのかよ、しつけえよ、とおもった尻にとろとろっとゼリーが足されて動きがなめらかになる。やばいやばい。 力抜け、って苦笑したサスケがケツをかるくパチンとたたいてくるのに悪態をつくどころの話じゃない。落ち着けっていう声がやわらかいし、二の腕をさする手つきも、なんだか、そう、なんだか、意外と優しくてびっくりする。 重ねた体におしあたる、サスケの奴はごりごり硬くて昂奮してるのはわかる、指先も息も熱い、なのにそうやって優しい声が出せるのって、男だからわかるけどちょっとすごい。いやまあ、穴まわりぐるぐる触られてて、もう、こわくてびくびくしてんだけど。 いつものぶっきらぼうが、不意打ちでやわらかくなって見せる、しかも二人きりのところでってすごい、すごい詐欺にあってる気分だ。そんなのに、欲情とは別のところでドキドキときめくオレもたいがいなんだろう。 こいつに好きになってもらえるって、幸せなんだろうなあ、と考えて、頭の中のオレが『えー、マジで?』と抗議をするが声がちょっと小さい。 「安心しろ」 いやいやいやいや安心できねえよ。まだまだ知らない扉パッカーンしたくねえってば、お婿には奇麗な体でいたいの、とか思いながらこんなことオレ、サスケにやってたんだなあと思ったらもう、猛省するしかないけどそれとこれとは別な気がする。言い訳だけど。 「最後まできっちり面倒みてやる」 パチーンと、手術する医者よろしく薄手の手袋をはめたサスケが笑う。なんだよそのいい笑顔。 (……オレ、オレ、マジで掘られちまうってばよ!) まあ、引き続きサスケのキャラ崩壊もはなはだしい『ええか〜ええか〜』が続いたわけで、オレはいろいろ反省したのだった。まさか俺の真似ってことはないって信じたい。ええか〜はさすがに噴き出すし萎え萎えしょんぼりだけど、だって、男の子だもん。こすれりゃなんでもたっちゃうし、三秒に一回やりてえなしか考えてない生き物だからしょうがなかった。 「……おい」 「んー?なんだ、よ、サスケ」 「てめえ、これなんだ」 ぐりん、と指を動かされて、俺は硬直する。わ、わ、と奇声をあげるのに、サスケはお構いなしだ。 「なんで、こんな」 おケツがゆるゆるなのかって話だよな、これには心当たりがちゃんとある。 「あー、今日の午後さ、ちょっと」 あーん?ってサスケ、顔がドやくざでめっちゃ怖い。 ちょっと時間は遡る。 「負けねえってばよ」 「その子に?」 うふふー、と笑いながらスモモちゃんがローションのボトルを取り出す。両手でねっちねっち擦り合わせて温めながらオレの腕に塗りたくった。繁華街の裏道、電光掲示板をみて呼び込みのおっさんと値段交渉して、ソファに腰かけファイルにはいった写真でご指名。メニューはどうなさいますか、とマッサージのカウンセリングをしつつ、サスケの話をすると、スモモちゃんはくすくす笑った。 「じゃあ、腕から、失礼しまぁす」 水着で包まれててもパッドが入ってないから、形が丸見え、おっぱいがぷにゃぷにゃしてて、もうすべすべでちょっとケツの後ろがきゅって持ち上がってぞわぞわする。 今日はおっぱいぷるぷるゴックンコースにちょっとオプション、まあ詳しくは割愛するが、つまりおっぱいがぷるんぷるんな訳で、おっぱいってほんと偉大だよなあと思う。女の子のわけのわかんないところとかわがままなところとか、どうにも優しくしちゃう男のだめな大抵のことはこのぷにゃぷにゃユニバースにて終わりだ。 もにゃもにゃ手を動かしながら、サスケに乳があったら違うんだろうかと思うけど、なんだかそれは違う気がして変てこだ。 リラックスできましたか、と可愛く尋ねてくるのにうんうん頷くとスモモちゃんはよいしょ、と俺の体を水着姿でまたいだ。プリンみたいなお尻が俺の腰の上でつぶれて、あーもう抜きてえしか考えられない。 「じゃあ、ふふ、リクエスト通り、しますねぇ」 力抜いて、とふうっと温かい吐息が股間にかかって、ほそい指が俺の膝から太股を行ったり来たりする。いつのまにか指にしっかりゴムがはめられてるのはさすがプロのお手並みだ。 うう、怖くて涙がでちゃう。だって男の子だもん、っていうわけじゃなくて、まあ、それなりだった。へー、こんなのもあるんだ、みたいな。 「……てめえは」 「え?」 「ウスラトンカチ」 バカだあほだとは思ってたけど、ほんとに頭悪ぃな、と言われて、ナルトは驚く。 「なんでだってばよ」 「うるせえ、萎えた」 ごろん、とナルトの脇に横たわってサスケはゴム手袋を手から外して丸めゴミ箱につっこんだ。実際、昂奮状態はおさまったようで、もういい、と布団に入りこむ。 「……浮気じゃねえよ?」 「そうか」 背中を向けたままどうでも良さそうに言われてナルトはかちんとくる。自分が悪いことをしたような罪悪感が背中あたりにぶらさがって、怒りの後押しをした。 「ちげーっていってんじゃんか」 「そうだな」 「なんだってばよ、その適当な返事」 「寝ろよ」 促す声が平静なのがうそ寒い。腕をひっぱると胸の下ふりむいた眼が暗がりのなかですこし光った。 「どうしてなのって言えよ」 そしたら言い訳すんだから、と促す声が、凄んで荒くなる。ふっと黒目が細められた。 「……オレが悪ぃのか?」 「そー、じゃなくって」 笑うのに、今まで荒れてたところがちょっとやわらかく宥められるのが分かって声が弱気になる。 「サスケ、あんま、アレじゃんかよ。ケツ、よくねえだろ?」 「……」 「だからさー、やってみりゃわかんじゃねえかって」 「……てめえは」 ばかか、と同じリズムで耳を掴まれて上下上。いたたたた、と叫ぶオレが突っ伏して逃げると、背中をなだめるように撫でられた。 「病気もらったらどーすんだ。フェラしねえぞ」 「えっ!?」 「なんだよ」 「しっ、ふぇ、え!?」 「しねえよ」 えーと抗議をあげる俺に検査して結果がでるまでな、と言われてしまった。なんだよそのバイキン扱い、とぶすくれると当たり前だろうが、と頭をたたかれる。 その、すこし安心して俺を怒り飛ばすようすに、ようやくコトンと音をたてて胸に落ちてきたのは、サスケの好意だった。言葉で言われたり、抱きしめあったりはしてきて、わかってたつもりでわかってなかった。 「……サスケもどっか行ってたんじゃねえの?」 眉を片方だけあげて口をへの字にする仕草をちょっと上目づかいにみて、顔を伏せる。 「店、ひいきの」 「……お前と一緒にすんじゃねえよ」 だって、さっきのぜってえ素人の手つきじゃねえし、とぶちぶち呟いていると、寝るぜ、とサスケが布団を引き寄せる。ごまかしてんじゃねえよ、と後ろから抱きつくとため息が聞こえた。 「なー、サスケェ」 「うるせえ、寝ろ」 「ごまかすなってばよ、一人で練習したんかよー!嘘つくなってばよ!」 「……」 え、なにその沈黙。 |
「ポピーはご機嫌ななめ」/ナルトサスケ |
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