ばちんっと思い切り大きな音が響いた。ばさりと顎あたりの髪が揺れて視界に乱れかかる。ぎっと唇を噛んで、サクラは思い切り右手を振った。ぱん、と頬を張り飛ばす音が響く。

女の場合は喧嘩慣れしていない分、手加減がなくてけっこう痛い。腫れあがりそうな左頬の口中、どろりとした血の味が広がる不快さに顔を歪めた。すぐに嘲笑に筋肉の動きを切り替える。



あんたなんか、勉強しかできないじゃない。



なんの捻りもない悪口に思わず失笑した。

だからあんたたちはバカなんじゃない。

どうせ女なのだ、成長すれば体力が男子に劣るのはわかりきっている。身の軽さや技術である程度はカバーできても根本的に体力が違うと言うことは、持久戦や型が崩れた場合に有効打がむずかしいと言うことだ。言い訳とか負け惜しみととられてもかまわない、事実を並べただけで負け惜しみと取る相手の品性を、ただ単に自分と同じだと思わないだけだ。

自分にできることを伸ばし、自分に出来ない事を知ること、自分の力でその時の最善を尽くすこと、それでも駄目なら自分には支えてくれる仲間がいる、自分は仲間が出来ないことができる、それを知っている。自分はちゃんと武器を持っている。

髪の毛を背中半ばより長く伸ばすより、ずっと大切なことだ。
ひとつ、ふたつ、と自分の中で問い掛けていく。

手も細いし、体力もない、ときどき、女だと言うことが厭にもなる。でもどうしようもないと言ってただ泣くだけで、何かした気になって甘えていた自分も知っている。比べると沢山落ち込むことがある。もしかしたら一番できる勉強だって、まだまだ足りないのは判っている。でもそれを知っている。

自分の前にある道はいつでも彼らの隣に続いている。
だから恥じることは何もない。



「その勉強すらできないあんたなんかに云われたくないわよ」



恋に命をかけているの。恋のほかにも命をかけているのよ。

きっとおそらく、サスケにもナルトにもカカシにも、おそらく女という生きもの以外には決して見せない表情を自分はしていると思う。
















「about a girl」/サクラ










あなたはわたしの誇りです。

→「035:髪の長い女」









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