胸のしたで震えるしめったシャツの背中、耳朶を甘く噛み、ぬるんだ床とシャツの間あわいにさしこんだ指先をあそばせる。 「く、ふ……ぅ」 うすい生地をおしあげる尖りをつぶすように撫でまわせば、むきだしの床にちらばる黒髪がもつれて滑る。サスケは床についた肘に右の頬をおしあてて眉をひそめている。目をきつくとじているのが恥ずかしいからか貪っているからかは後ろから犬のようにおおいかぶさっているカカシにはわからないし、どっちだっていい。 視界にひっかかる玄関の下からさしこむ日差しにしらじらとひっくりかえされたハーフパンツと下着、サンダルが転がっていていてカカシの慌てぶりがみえようというものだ。 はんぱに沈めた場所からとけだす熱にカカシも息を詰めながら、なんども強ばった首筋にキスを落とした。ぶるぶるっとサスケは獣のように体をひきつらせる。色気なんてとんでもない。なれない犬の子みたいにきかん坊で、押さえつけてるカカシだって半端にずりおちたズボンからパンツの色柄が覗いていてなんともまぬけ極まりない。 ほんとうはこんなことに使う場所じゃないってことはわかっている。気持ちよくなるだけならよそでもいいし面倒がない方法だって、悪い大人だ、サスケがしらないたくさんのことを知ってる。でももう何回目、と考えて両手と片足がふさがったところで数えるのをやめた。 「ぜんぶ入れていい?」 訊いたくせに返事を待たず小刻みにおしいる。やらしいこといってんな、という悪態はあ、あ、と浅いゆさぶりに押しだされるかすれた声にすりかわってますますカカシを卑猥にさせるだけだ。苦しげにも聞こえる。どうしようもなくにじむ甘い響きだ。耳だけでなくだきしめた体からも伝わってくる。 シャツの中で指をうごかすたび、うなじに吸いつくたび中がうごいてきもちがいい。大きく動いてもいいけれど今はこれぐらいのゆるさがよくて、目をとじてカカシはうっとりと絡む熱にひたった。 「し、つけえ…ぞ、あんた……ッ」 「わかくないんだって、そんなにー」 まくれあがるシャツをあいた手のひらで上に押し上げながら、汗粒でにぶく光る背中のくぼみをなぞりあげる。シャツの中の手はまだしつこいぐらいこねくりまわしている。脇にひっかかってお気に入りの貝殻骨が羽みたく動くのが見れない。剥いてしまおうかとも思ったが、服をきたままというのもなんだかたのしい。 「ん、んッ」 がくんと肘がくだけて床に頭をうっても、もうそんな痛みも気にならないらしい。どこかからきこえるレコードのショパンや、子供の声、足早にアパートの廊下をとおる足音にサスケの体が強ばる。ふ、と細い陽だまりが翳ってドアの前に誰かが立ったのだとわかる。 ずりあがって逃げようとするのを引き戻す。 「ゥ――ッ」 圧迫感に体を強ばらせるのがかわいそうだが、ここでやめてもかわいそうだ。 がこん、と投函されたチラシにカカシは笑うと、斜めにふりかえった黒い目が無言で非難している。 「大丈夫だって」 あさく短い呼吸を意識して深呼吸にするから時々中がひきつる感じもいい。でもだんだんがまんがきかなくなってるのはわかっている。どこをどうすればいいのか、知ってるのはカカシだけじゃない。両手と片足、それからまだまだたくさんしてきた。 (最初はどっちかといえば痛いぐらいだったし) (傷つけないようがまんもしなきゃいけなかったけど) いきたい、と咽ぶような声にカカシはサスケからみえないところで笑う。サスケの心臓の真上に自分の心臓がある。心臓に心があるだなんてナンセンスはいったりしないけれど。 (なんでお前こんなことさせちゃうぐらいオレが好きなの) 「うえに乗っかって」 むかいあって抱き合うと背中に爪を立てられ、カカシは痛いと顔をしかめる。 悪態ひとつで無体を許すかわり、いろんなものをサスケにとられた。 |
「something for the pain」/カカシサスケ |
LOVELIFE2でしょうか。 |