猫の恋、夜。













ぎ、と身じろぎのたびベッドがかすかに鳴る。はねそうになる息をかみ殺しながら、天井に波模様をかくカーテンからもれる光をみていたサスケは視線を落とした。春嵐だ。風が鳴るたび、光が揺れる。

もぞもぞと子供のかくれんぼのように動くシーツの固まりが視界の下のほうにある。露わでないだけましかも知れないが、見えないだけに相手の動きが予測できなくて、たやすく追い上げられた。だからといって見る勇気だってとてもない。

「は…っ」

顔が見えないから声をだせ、きもちよいかわからないから、と臆面もなく卑猥なことを言う男だ。

(頭ン中じゃもっとすごいんだからさ)

これぐらいでやめろとか言わないでよ、と言う男に人生の選択を誤ったかもしれないといまさら思うサスケだ。エロガッパめとののしっても聞く耳をもたない。聞こえてるくせに余裕で無視する、そのくせ大事なところは逃さない、最低だ。

「ぅ」

熱を孕んでやわらかに芯をとおしたのをカカシはシーツの中でゆっくり溶かすよう口で甘やかす。覿面にせっぱつまった声がして、下腹に重くこもった熱をどうにかしようと手を伸ばした。そんなにもたないかもしれない。

「あ」

電気でも通したようにはねたつま先が、シーツをベッドの上から蹴り落とした。ひやりと汗ばんだ体がすずしくなり、サスケと目が合った。

暗がりでも夜目に露なカカシの格好にサスケが強ばる。

「…!てめえ……っ、はな」
「黙って」

がばっと上体を跳ね上げて、よじる腰を押さえこんだ。ぐっと髪の毛を掴むのをしかるように歯を立てると、竦んだように強ばりびくびくと堪える。

「カカシッ、……ぅ、やめ、やめろっ……て」

まったくうるさい。ぎりぎりのくせに。追い立てるリズムにあわせて、自分のも煽ってやればじわじわと気持ちよくなってきて、息があらくなる。きつく瞑って目をあけようとしないサスケにすこし苦笑する。あんなキスを覚えたくせにその初心さはどうかと思う。

「んンッ、う」

目をつぶる前にみたものが瞼の裏にちらついて離れない。やらしい男だとはしっていたが、やきついた光景はあんまり卑猥だ。見慣れない唇を出入りするあらわな性器も濡れた音も、やわくきつく絡みつく粘膜の感触もひっかかる歯の感じも、それだけでたまらないのに。

神経のかたまりに当たるカカシの荒れた息遣いとくぐもった声。同じようにあざとく動くカカシの手が指が、と思ったらもうだめだった。あっけない。

「ん……っ、く、ぁ―――」

腹筋が断続的に痙攣した。吸い上げられるのに気が遠くなって体がシーツに沈む。じゅ、と残ったのまできれいにとられて、つま先が反った。

「あー…もう、なんて声だすんだよ、おまえ」

いっちゃったじゃない、と息をすこし荒げたカカシが唇をぬぐいながら情けなさそうにぼやいた。そしてシーツで汚れた右手もぬぐい、サスケの横にねっころがって肩を引き寄せた。こもる青臭さにサスケがすこし咳き込んで、かすれた声で悪態をついた。

「変態」
「右手が恋人だろ、そんなの何回したかおぼえてないしー」
「……」
「おかずお前だしー」

おまえだって、と言われて詰まる。だが想像なんてまったくかわいいものだと思い知らされた。なんなのだ、この臆面のなさは。

「それに、俺が一回出しといたほうが楽でしょ」

なにがだ。
















「猫の恋、夜」/カカシサスケ





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