アカデミーの半地下に作られたシャワールームだ。 1 second flat 木漏れ日と格子で遮られた光が濡れた床板を白く切りとっている。風でゆれる夏の光は目を閉じても暗い視界に残像を残し、肩口に埋まった髪を蜜色に透かしている。ぬるんだシャツが背中にはりついて気持悪い。まさぐる手が汗じみた皮膚をたどっていく。ちり、と襟をずり下ろされた鎖骨に痛みが走って、噛みつかれたのだと覚る。思わず首をすくめると頬骨にナルトの頭が当たった。 もう、わけわかんねー、とナルトが必死な声で言えば、オレだってわかんねぇよ、と返した。でも口には出していないのだ。だからナルトはなにかサスケの中に答えがあるのだと思っている。 嫌悪や痛みすれすれに落しこまれる刺激が、このところなじみの感覚を引きずりだし、体温をあげていく。でっぱった貝殻骨を指がなで上げながら、うながすように押しつけられて同じく下履きの中に手をつっこめば、まだ乾いている柔毛がざらりとしていた。まさぐる手に力が入ってすこし痛い。でもそれがいい。 飽くことなくくり返して、互いの体を探って知りあおうとして、でもまだ見つかっていない。焦らすようにひきのばされて、腿が痙攣する。二人してタイミングを合わせようと(片方だけが先に行ってしまうと気分がなくなるからだ)必死になってはきだせばざらりとした飢えがのこっているのがわかる。 探り合っているものがまだわからなくて、いつも焦っている。 いつでも発情は唐突で、最初はあったためらいも欲求の前には立ち消えてしまう。 たとえばドアを閉めるときの手に浮かび上がる筋や血管でもよかったし、黒く固まった血がついた唇でも、髪からたちのぼる体臭でもいい。そんなときはキスをあまりしない。がっつりとしていると息苦しくなってしまって、充血した器官がおざなりになってしまうからだ。 すべりそうな足を叱咤して壁に肘をつっぱり二の腕に顔を埋める。にぎりこまれ追い立てられ、のぼりつめ吐き出したあとようやくに唇を重ねて息が落ち着いてくれば、いままで遠ざかっていた暑さが体を取り巻いて汗がでてくる。こめかみから落ちる汗を手のひらでなであげながら、キスを深めて鼻を頬におしつけあう。上顎のところをなめられると、震えが脳天までいってしまうし、息はくるしくて酸欠になれば、発熱してまた手を伸ばす、そんなことの繰り返しばかりだ。 おぼえたての猿のように欲求には正直だった。ほんとうに、耽るとはこういうことだ。 でも足りない。足りてない。もっとだ。どうすればいいなんて、知ってる奴なんていんのか。お前がわからねえもんが、オレにわかるわけないだろ。先に答えを出せるのはどっちかわからないのに、頭を巡るのは、だめだ、と、もっと、だけしかない。 それでも1秒毎に感じている。 1秒だって息継ぎする暇なんてないのだ。 |
「1秒フラット」/ナルトサスケ |
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