恋はやっぱり切ない。 昔のえらい学者先生がいうことには、恋しさは対象の欠如を未来において補充しようと「乞う」こと、恋しさは常に対象の欠如に基を置くため、つねに片割れを喪失している「寂しさ」を持たざるを得ないということ、寂しいとは不完全な片割れでしかないことを自覚することに由来するのだそう。 恋は寂しく、孤独で、けれど一人ではやっぱりできない、だから切ないのだ。 押して駄目なら引いてみろ、というのはこの意味でいえばもしかしたら「寂しさ」を感じさせることで「恋しさ」に気づかせることなのかもしれない。 なんて言ってみたって、サスケがオレへの恋に芽生える前にオレが寂しさで死にそうだった。 ご飯を一緒にたべたりお風呂をもらったりで気がついたことはいろいろあって、たとえばサスケは無口だし愛想は無いし無表情だけれど、別に誰とでも同じような態度で、けれど七班だとすこしほどけてたまに笑ったりするし、一緒にいる時間がたくさんあればやっぱり、笑う顔だってみることが多かった。 サスケの笑う顔っていうのはけっこう貴重で、ナルト相手によく使ってるのが小ばかにした鼻でわらう顔、あとサクラがたまに悩殺されているのが、呆れて笑う顔。オレもちょっとサスケの呆れて笑う顔が好きだったりする。しょうがないものを見る眼差しでもけして突き放さない目、見ていると頭を撫でてほしくなるようなそんな目だ。 サスケを自分で構い倒すなんて簡単だ、いくらでもできるしとても楽しいことも知っている。でもできるならサスケに構ってほしいのだ。オレの心臓をサスケの何気ない行動が操るように、オレの指先一つにまで心臓を繋いで欲しい。それでもって、もうちょっと笑ってくれたら嬉しい。 「先生は寂しいよ」 「なにがよ」 「冗談は顔だけにしろってばよ……イタ、痛いイタイイタイ!」 ギブギブギブ!とナルトが腕を叩くのにアイアンクローをやめたオレは、ため息をついてもう一度寂しいと呟いた。 「うわ、サクラちゃんオレここんとこ赤くなってない?」 「別に平気なんじゃない?」 さらりとドライな言葉をはいたサクラは、私も部屋にもどるね、と弾んだ声でいいながら立ち上がる。サクラが行ってしまえばナルトも行ってしまうわけで、オレはぽつねんと一人店先の椅子に腰掛けたままだ。 「なんだい、先生、ため息ばかりだねえ」 「いやあ、はははは」 と笑った声も結局最後はため息になった。どこかでけんけんと恋する鹿が鳴いている。秋だ。心づくしでおばさんがくれたふかし芋の温かさがじわりとしみて来て、なんだかすこし泣きそうな気持ちだ。ほんとに切ない。 まっすぐいこう ぱらぱらと降り出した雨脚は宿にもどる頃はずいぶんと激しくなって、宿屋の暖簾をくぐって撫でた暖かい空気にほっとする。あらまあ随分濡れなさって、と奥からでてきた仲居さんがタオルを渡してくれて、お風呂はいつでも入れますから、と言ってくれた。玄関で肩の水を払っていると、階段をおりてくる三つの足音。ロビーをスリッパで歩いてきたナルトたち三人が見あげてくる。 「先生、おかえり」 「これから風呂行くんだってば、先生も」 ナルトが言うのに笑った。すぐ行くから、と返せば早くしろよ、とサスケの声がしたのに振り向きそうになる。どんな顔で言ったのかほんとうはみたい。けれど意地をはって三歩あるいてから振り返れば、背中は暖簾をくぐるところだった。 それでそのままオレはお風呂に行かなかった。夜中に入ればいいかなと思ったのだった。 ふくふくゆで卵みたいな顔をしてもどってきた子供達がご飯を食べて寝た後オレはむくりと起き上がって、部屋つきの風呂のほうに行く。部屋つきの風呂といっても家族用の部屋に泊まっていたから湯船はやっぱり家のものより大きくて手足をゆったり伸ばせるのがよかった。 さて、それで話は冒頭にもどるのだ。 古今東西、押して駄目なら如何するか? 押してだめなら引いてみろだ。 だって、サスケが、恋に自覚したオレをみて腹の具合でも悪いのかなんてロマンのひとかけらもないセリフをのたまったサスケが、大安売りのキスをするくせに「べろはいれんな」とかわけの分からない身持ち(?)のかたさを見せたサスケが、いまオレの後ろにほぼ裸で頬を赤くして立っていて。 「アンタが、オレのとこに来なくなって」 「ああ、うん。あんま行けてなかったよね」 なんて嘘八百、どうしてもはずせない理由があったみたいなそ知らぬ顔で言ってみるけど、ほんとはめちゃくちゃ行きたくてたまらなかった。だけどぐっと我慢でこらえてたんだ。 「いろいろ、その、オレなりに考えたんだ」 桃みたいに産毛がふわふわした頬はうっすら赤くなって、名工が筆をいれたみたいな切れ長の目じりも粉砂糖でもまぶしたみたいなようす、お湯の温度がどんどん体に流れ込んで来て心臓が高鳴る。 「なにを?」 「それで、それで、オレ、気がついたんだ、ほんとは」 がば、と顔をあげたサスケがオレの肩に手をかける。緊張ですこし震えているのにオレも思わず震えそうになる。だって俯いた黒髪からのぞいて見える首筋がすももみたいにあかいんだ。貝殻みたいな耳もあかいんだ。がんばれオレの愛と勇気と誇りとすけべ。はじめの一歩をふみきるんだ。どんなことばより正確な温度で声で伝えるんだ。 「アンタが……」 ごくりと喉を鳴らした瞬間。 「んんー?」 寝ぼけた声が聞こえたかと思えば、がらりと扉があいて冷たい空気がざっと肌を冷やした。片手で目をこすり、片手をパジャマの中に手をつっこんで下腹を掻いてたたずんでいるのはナルトだ。 「あれェ?といれ……?」 「……便所はそっちだ」 先に硬直からとけたサスケがナルトの手を引っ張って、浴室の外に追い出す。 「んんんー?なんでサスケとセンセが風呂はいってんだってばよ」 「いいからドベはとっとと寝ろ」 「んだよ、二人してやぁらしいの、サクラちゃんに言いつけてやる」 口の中で寝ぼけていろいろいっているナルトにサスケはやらしくねえよ、誤解すんな、と反論しながらトイレにナルトを押しこんで戻ってきた。体が濡れていたのに、浴室の外にでたから冷えてしまったのだろう、小さくくしゃみをするのに入れば、と促すが首をふる。 「それで、さっきの話の続きは?」 悪いけど、ちょっと流すことはできない。だって、だってサスケが、恋に自覚したオレをみて腹の具合でも悪いのかなんてロマンのひとかけらも以下略なサスケがなのだ。立ち尽くすサスケの両手を取って下から見上げると、眉根を悩ましげによせたサスケは深呼吸をすると、熱っぽい息をはいた。 「だから、オレ、アンタが」 「トイレットペーパーが切れちまったってばよう〜」 「…………ウスラトンカチ」 ウスラいんないよ。トンカチでいいよもう。他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られなきゃいけないんだぞ。浴室の戸をがらりとひいたナルトが寝ぼけた顔を覗かせる。 「なんだよ、先生もサスケもオレんこと仲間はずれにすんなよう〜、オレも入るー」 「ナルト、てめえ!」 もそもそ服を脱ぎながら浴室にぺたりと踏みこんだナルトがパンツに手をかけるのをサスケがはっしと掴んだ。 「んだよ、サスケ」 「チィ……!」 寝てろ、と短く言うやいなやサスケはナルトの顎の下にぐっと手のひらを入れた。ちょっと待て。待て、サスケ。頚動脈を圧迫されて酸素がたりなくなったナルトの頭はあっというまにがっくり前に折れた。ずるりと倒れそうになるナルトを肩で受け止めたサスケは、いくら身長差が若干あるとはいえ体重はあまり変わらないナルトの体を重そうにしながら浴室の外へと連れ出す。サスケ、タオルがずれて大事なものがみえてしまいそう。オレは大事ななにかをなくしてしまいそう。 いや、ちょっと待て。なにやってんの、この子。なんでいきなりナルトのこと気絶させてるの。 「カカシ」 「なに」 「悪いが、アンタの思うようにはさせねえ」 「は?」 「だってアンタ、ナルト狙いなんだろ?」 「は?」 ぴしゃり、と後ろ手に浴室の戸をしめたサスケは呆然とするオレの前に立ちはだかった。いささか小柄ではあるけれども。いや、でも待て。待て待て待て、ちょっと待て、サスケよなぜにさりげにナルトをオレから引きはなすんだ。しかもその疑惑に満ち満ちた視線はなんだ。 「だって、アンタ、そういう趣味なんだろ…?」 「は?」 頬をわずかに赤らめていうサスケはかわいいかもしれないが、言ってるせりふが尋常じゃない。確かにオレは成人男性でありながらおまえに懸想したあげく、言い寄ってる、うう、そのホモ寸前なわけだけど(自分で言っててやるせなくなってきた)、十二歳ぐらいの男の子ならだれでもいいなんてノンポリじゃない。胸だって大きいだけがロマンじゃない、小さい胸だって小さい胸の味があってたまらないって話がずれた。 こう、なんだ、もやもやしたあげくに目で追いかけちゃったり、腕をあげた瞬間にみえる上腕の内側だとかお腹だとか背中だとか、上から覗き込むとしょっちゅうチラチラしてる胸元だとかは気になる。気になって気になって辛抱たまらない、じゃなくて仕方がないと思わないか。 だって男の子から愛と勇気とスケベ心をとったら何がのこるんだ。ぺんぺん草だって生えない干ししいたけより乾いたものしか残らない。規制のない具体例をあげればますますヘンタイのレッテルを免れることは難しいから黙秘するけど、ヨコシマな目でみるつくもんついてる性別はサスケだけだった。いや、胸はるところじゃないかもしんないんだけどね。 これでもオレは純情っていうか、好きになった相手には誠実だもん。浮気はしない主義です。いつでも本気です。これは浮気男の常套句だけれど、いつだって本気は一人だよ。いまはおまえ一筋だよ。そのお前が「ナルト狙いなんだろ」って「そういう趣味なんだろ」ってあんまりだ。 あんたはそんなんでも一応、上忍って指導する立場だから、とか見過ごせないとかサスケがまだなんか言ってるのもちょっとよく聞き取れない。さりげなく失礼なことを言われてる気がするけど、いや、ほんとに待って欲しい。 驚いたオレにサスケは片手を挙げて手のひらをオレに向ける、もうしゃべるな、という仕草をした。 「アンタにまえ言われたからな、他人の嗜好にとやかく言うつもりはねえよ」 「いや」 「いいわけしなくてもいい」 言ったサスケの、何もいわないでもいいぜ、わかってると雄弁に語る、あの信頼しあった飼い犬をみる飼い主の眼差しの美しさといったらなかった。かっこいいことといったらなかった。でもいい訳させてよ頼むから。 「いや、ちょ、誤解だから」 「なにがだよ」 全部だよ、といいそうになるのをぐっと堪えた。押してだめなら引いてみた、のはいいけど変な方向に効力が発揮されてしまったようだ。なにをどう軌道修正したらいいんだろう。 「オレがすきなのはナルトじゃなくてね……」 「だから、その、ナルトぐらいの年の」 「ちがうから」 きっぱりと言い切ったオレにサスケは訝しげに眉を寄せている。のもかわいくみえるのはやっぱり恋の盲目なんだろうなと、ときめいてきてしまった。 おれはお前のむだにかっこいいところが心底好きだ。あんだけ仲悪いくせしてさりげなく変態の毒牙にかからないよう気遣うなんてどこのおとぎばなしの騎士さまだってはなしだ。王子だ、勇者だ、すてきだ。しかもなにがいいってオレの目的が自分だって気付いてないのがバカかわいい。ばかな子ほどかわいいっていうけど一見完璧主義者のくせにぬけてるなんてたまらない、最高だ。 (ああもうだめだ) だってタオル一枚ひんむいたら裸なんだよ。生まれたままもいいところなんだよ。これで興奮しなかったら男じゃないよ。愛と勇気と誇りとすけべで男の子はできてるんだよ。いまものすごいキスがしたい。 「なに笑ってんだよ」 「いや」 「…これでもオレは」 ぐっと喉で堪えたちいさい声をだしたサスケにオレは顔をあげる。はじめて空気にふれる鉄みたいな強い真摯な目が、ひどくまっすぐオレの両目をとらえた。 「アンタを」 心配してるんだ、と言うのにもう我慢ができなくて笑ってしまう。茶化すなとサスケが怒るけど、茶化してるわけじゃなくておかしいわけじゃなくて、純粋に違う。 おばあさんのお口はどうしてそんな大きいのって赤ずきんにきかれた狼はこんな気分なんだろうか。そりゃお前を食べるために大きくって、わらってるのはお前を食べるのがうれしくってたまらないから。 キスどまりでおさまるかね、おさまらないね。おさまるわけない即答だね。 結果的に騙しちゃってごめん、だけどあくまでおれにとっては不慮の事態の結果であって、こんなにおいしい墓穴をほったのは俺ではなくお前なわけであって、春に花がさくようになるべくしてなった帰結というか運命だとおもうんだけどどうだろう。こういうのがチャンスだとか好機とかラッキーとかいうんだな。 ちなみに天才とは99パーセントの努力と1パーセントの才能でできていて、才能とは100分の1のラッキーをつかまえることだそうだ。まさにギフト。そして俺は一応天才忍者。幸運をつかむためオレはサスケの手を捕まえる。 「なんだよ」 「サスケさ、オレに話があるって言ってたよね」 「ああ」 「オレもサスケに話があるんだけどね」 「なんだよ」 恋ゆえの理不尽に堪える日々は終わりをつげ、晴れた雲間にはおあつらえむきに天使の梯子、ファンファーレがきこえるにはうってつけ。通り雨に洗われいよいよ天は青く雲は白く花は赤く緑は深く虹の露にすべては新しく色づいている。雨にうたれた花みたいなおじぎはもういらない、頭をあげれば喜びのラッパはまもなくなり響く、そうだろそうだなマイリトルサン。 「ちょ」 伸び上がって首を傾けて、まずこめかみに。肩をすくめるのに鼻で黒髪をかきわけて、すこし赤い頬に。驚いてみあげてくる瞼に、戸惑ってうつむく反対の頬に。逃げようとする顎をつかまえてとびきりのは唇に。 「やめ」 「やめないよ」 「おい」 「好き」 たった二文字でサスケが固まる。もしかしていつナルトが起きるかわからないから声にはださないで、息だけで、サスケにだけ聞こえるように。 「サスケが好き」 なんで誤解するの、となじるようにいってもサスケは時間をとめる呪いにかかったように動きをとめていて、もう一度唇に唇を押し当てる。何週間ぶりだかわからない。 「ナルトにこんなことしないし」 「でも」 「でももへちまもないよ。しないし、するつもりないし。オレ、お前に好きだって言ったよ」 信じてくれなかったの、ともう一度なじると口をつぐむ。 「ちょ、それ、やめろ」 「暴れないで」 「だから……っ」 ひくりとサスケの喉がなる。うるさくするとナルトが起きるよ、と耳に唇をおしつけて脅しつければ戸のほうに視線をはしらせて口をつぐんだ。横目に睨みつけていた目をきつく閉じて、ふてくされたけれどどこか困った声で返してくる。 「だから、やめろって」 「やだよ」 「カカシ」 「オレ、おまえにすきだって言ったよ」 ひどいよ、とサスケの額に額を押し付ければ、眉間に皺をぎゅっと寄せる。しばらくして、わかったから、と言うのにようやく、ため息をこぼすことができた。 「それなら、いいよ」 「よくねえよ」 「なんでよ」 ぎゅっと抱きしめたらサスケが身じろぎをする。うーと唸ったサスケがなにをいいたいのかはほんとはすこし分かっている。 「……変なモンたてんな!」 「変なもんって人類の五割が持ってるものに対して、なんて暴言はくのよお前は。そもそも生理現象でしょうが生理現象。健康な証拠だよ」 「わけのわかんねえ屁理屈こねんな!趣味が変なのはかわんねえじゃねえか!」 オレだって思うよ。なんでお前にって。でもしょうがないじゃないか。じたばたと暴れるサスケにやれやれとため息をはいたオレは抱きかかえていた腕を強めながら、上を向いた。 「あー……もう、しょうがないなあ」 えいや、と気合をいれてがうなること数分。 「はい」 「…………どうやったんだ?」 疑問はごもっとも。まあ上忍だからっていうか愛の力っていうか、うん、まあ愛の力。愛だよ愛。うん、たぶん。 「けっこうコレ負担かかるんだから、子供は覚えちゃいけません」 「バカにすんなよ」 「覚えてどうすんのよ」 「もしものときに使えるじゃねえか」 まあね。愛の力が試されるときにね。試させるつもりないけどね。がんばっちゃいますけどね。 いうなれば俺は回遊魚、果てしなく海原を泳ぎつづけなければ窒息する定めをせおったさまよえる青い弾丸もといカツオ、いやマグロ。たちどまってしまえばたちまち溺れる。恋は落ちるもの、落ち続けるもの、自由落下が終わるときには足のうらには恋の底、恋の終わりだ。落下速度も加速度もでたとこまかせの成行任せ、底に愛の泉がわくか枯れるかわからない。 押してだめなら引いてみたらへんちくりんな目がでるのも人生ってサイコロは結局先がよめないということ。だからといって立ち止ってしまえば終わり。なのでオレはもう一度サスケにキスをしたいとおもうし、わかってくれるまで好きって言うし、好きって言ってくれるまですきって言うと思う。オレの鼓動の早さにサスケの心臓が追いついてくれるまで、頑張れる気がする。 だってやっぱりナルトを構っていたときに見ていた眼差しは寂しさのせいなのかもしれないし、ナルトを守るために締め出しているけど、ほんとは邪魔だって思ってるんじゃないかなとかいろいろ考える。けっこう悪い感触じゃないからオレだって諦め切れなくってこまってるんだ。 まあサスケが実はナルトを好きでした、なんて寒いオチじゃなければいいなと思う。 (ちょっとそれはまずいんじゃない?) ナルト相手だとなんか勝てる気がしない。 だが負けと思い込んで勝負をおりたら、勝負以前に負けてしまう。がんばれオレの愛と勇気と誇りとすけべ。 人生だっておなじこと、心臓がとまったまま生きることはできないし死んだ後になにがのこるかはわからない。ならば瞬きの暗闇は死じゃないのか、朝の目覚めは生まれ落ちることじゃないのか、鼓動ひとつ呼吸ひとつは命の単位にならないのか? 俺は恋人とはじめてキスをするときはいつだって処女みたいなきもちになる。明日あえることがわかってたって約束したってさよならをいうたび何回さよならしなきゃいけないだろうとさびしくなってしまう。これが生成流転じゃなくてなんだろう?一日で何万回も死んで生きる新陳代謝、流れ星みたいに火花をとびちらして重力のまま一直線、さて箒星は落ちるために光るのか光るために落ちるのか、でも星と生まれて光るを望まぬ星はあるのか?咲かぬを望む花はあるのか? 答えはひとつだ。 星は光るし花は咲くのだ。 |
「まっすぐいこう」/カカシサスケ |
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